星街すいせい「THE FIRST TAKE」出演。実現を支えたチームにインタビュー
いつもnoteを読んで下さっているみなさん、こんにちは!
カバー株式会社 人事部 兼 採用広報担当の桑江(くわえ)です。
みなさま、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」をご存知でしょうか。ミュージシャンによる一発撮りのパフォーマンスを鮮明に切り取ることをコンセプトにした同チャンネル。独特の緊張感が伝わってくる映像は、非常に人気のコンテンツになっています。
ホロライブプロダクションからは、ホロライブ0期生の星街すいせいさんが「THE FIRST TAKE」に初出演。再生数1,000万回以上、プレミア公開の同時視聴数が16万人を記録しました。
カバーの中でも反響の声が大きかった、星街すいせいさんの快挙。先日行った、社内表彰イベント「COVERAWARD2022」では、実現に向けてこの企画を主導した「星街すいせい / THE FIRST TAKE」チームが「チーム賞」を受賞しました!
今回は「星街すいせい / THE FIRST TAKE」チームのMさん、Yさんにインタビューを行い、公開までの流れやこだわりのポイント、実現まで苦労した部分などをご紹介します!
■チーム発足から実現まで
──先日はCOVER AWARD受賞おめでとうございます!
「星街すいせい / THE FIRST TAKE」チーム発足までのお話をお聞きしたいのですが、お二人はこのプロジェクトにどのように関わっていたのでしょうか?
Mさん:自分は主に、「THE FIRST TAKE」側とのやりとりや、撮影する映像についてのプランニングを担当していました。技術的な分野はYさんたちのチームにおまかせしていたので、楽曲アレンジの方向性など、主にプロモーションや音楽面での調整を行っていました。
Yさん:自分は…というよりも、あくまで所属するチーム全員で取り組んでいましたが、モデリングや収録可能なキャプチャーシステムの構築など、今回の出演を実現する上で重要な技術領域を担当していました。
──まず星街すいせいさんの出演決定までに、カバーとしてはどのような経緯があったのでしょうか。
Mさん:そうですね。もともと出演したいというお話自体は、1年以上前からさせていただいておりました。2021年9月にリリースされた星街すいせいさんのファーストアルバム『Still Still Stellar』が大きな反響を呼んで、セカンドアルバムを出すタイミングで、出演したいなあと考えてましたね。
Yさん:自分も参画したのはそれくらいの時期ですね。撮影を「THE FIRST TAKE」が希望するスタジオで行うとお聞きしたタイミングだったので、技術的に何ができて、何ができないのかを返答したのを覚えています。
──公開まで1年以上も動かれていたんですね。楽曲はどのように選んだんですか?
Mさん:楽曲については、年末から年始の時期にかけて、こちらからプレゼンしたのを覚えています。最初から「Stellar Stellar」で出たいとアタックしましたね。そこから何度かお話を重ねて、取り組みを開始しました。
──「Stellar Stellar」一本勝負だったんですね!反応はいかがでしたか。
Mさん:担当者の方に「Stellar Stellar」をお聞かせしたところ、イントロの段階で好感触をいただいてました!その後、もう一度頭からフルで聞いていただいて「これはぜひやりたいです」というお返事をいただいたのを覚えています。
──音源で好感触をいただけたのは、なんだか嬉しいですね。
Mさん:そうですね。もちろんVTuberタレントという存在が、「THE FIRST TAKE」に初めて出演する、というのは企画的にもかなりキャッチーさがあったと思います。ですが、星街すいせいさんの楽曲があったからこそ、了承いただけたように思いました。音楽を聴いてもらったあと、映像的にも世界を狙いにいきましょうね、という話をしたのは今でも覚えていますね。
──そんなにアツい話をしてたんですね…!
■プロジェクトが本格的に始動。
──出演が決定してからは、どのように実現させていったのでしょうか?
Mさん:まず本人にお伝えしましたね(笑)。話がまとまるまでは星街すいせいさんご本人に全くお伝えしていなかったので。お伝えした際は本当に喜んでいただけました。
自分たちとしても、やるとしたら星街すいせいさんだと思っていたので、喜んでもらえたのは嬉しかった瞬間でしたね。その後、本格的にどのように撮影するかを検討していきました。
Yさん:そこからは技術的な分野を担当する自分たちのチームの出番ですね。当初モーションキャプチャーの投影などは、カバーのスタジオで撮影できるかと思っていたんです。ただ音響的な面を考えると、「THE FIRST TAKE」指定のスタジオで撮影をするのが必須だったんですよね。生の音を取るというのが前提になっているかと思うので。
そのためキャプチャーシステムを持ち込む必要がある、というところから詰めていった感じです。
──やはりスタジオによって、できることが全然違うんですか?
Yさん:そうですね。あくまでもカバーのスタジオってモーションキャプチャースタジオであって、音楽の収録スタジオではないんですよ。なので「THE FIRST TAKE」の音を取るためには、現地でシステムを構築する必要がありました。(注:旧スタジオ時代の設備)
──それは、かなり大変そうですね。
Yさん:とても大変でした(笑)
やっぱり音楽を収録するスタジオとモーションキャプチャースタジオって、同じスタジオでも全然別物なんです。モーションキャプチャースタジオって当然キャプチャー収録に合わせて作られている。反対に音声の収録スタジオは音を録るために作られている。
なので色々な機能が削ぎ落とされていたりします。それこそキャプチャーの撮影がしにくかったりとか。そんな中でどう落とし所をつけていくのか。その調整がかなり大変でした。
──どこからまず手をつけていったんでしょうか?
Yさん:まずは自社で収録するためのキャプチャーシステムを、先方に持ち込めるようなキャプチャーシステムに、ひたすら組み替えていったという感じです。全てが決定して撮影するまで、3ヶ月くらい必死で作り込みました。
──大変ですね。ちなみに社内では何名くらいの方が関わっていたのでしょうか?
Yさん:実は公開までは社内でも極秘に動いていたプロジェクトだったんですよ。なので5人程度の少数精鋭で動いていましたね。当初は既存プログラムの拡張程度でいけるという見込みでその人数でも問題ない、という想定だったのですが、結果的にもう少し大人数でもおかしくない作業量になっちゃいましたね(笑)。
──中でもこだわった部分はどこだったのでしょうか。
Yさん:実写とCGを合成するシステムを新しく作成したり、外部のスタジオ使用に耐えられるようにアプリを作り替えたりと、こだわった部分は本当にたくさんあります。「THE FIRST TAKE」専用のシステムに全て改造していくような作業だったので。
ただ一番こだわった部分でいうと、「THE FIRST TAKE」ならではのライブ感をどう表現するかという部分ですね。
モーションキャプチャーって、通常必ず後から修正するものなんです。ただそれをしてしまうと一発撮りではなくなってしまう。そのため全てのシステムを、「THE FIRST TAKE」専用のものに組み替えました。違和感がなく、かつ修正がない。絶対に一発で撮り終えて公開できる様なシステムを構築できたかなと思います。
──公開前の社内発表でも、本当に一発撮りであることを強調していましたよね。
Yさん:そうですね。実は収録前は、途中で修正などができたりするのかな?とも思っていたんです。ただ当然ですが、本当に一発撮りでした。それができるから「THE FIRST TAKE」ってすごいんだな、と改めて思いましたね。
だからこそ絶対にそれを崩したくないなと思いました。
モーションキャプチャーだから修正が許されるよね、ではなくて、VTuberタレントが初登場するタイミングだからこそ、絶対に一発撮りのための、システムをセッティングをしてやろうと思いました。
──「ライブ感」を表現するために苦労した部分ってありますか?
Yさん:どうやって実現したのかは言えないのですが、オクルージョン※の部分ですね。あの映像では右手がマイクの後ろに隠れて、左手はマイクの前になっているような演出をリアルタイムで行っています。前後関係を処理する分野ですね。
単純なクロマキー合成だと、そこを表現することができないんですよ。しれっと行っている部分ではありますが、技術的にはかなりびっくりするポイントなのかなと思います。
※オクルージョン:手前にある物体が後ろにある物体を隠す状態のことを指す
■技術的な分野以外のこだわり
──技術的な分野以外でのお話も教えてください。
Mさん:そこは自分が主に担当した部分ですね。まず今回の動画は、VTuberタレントが初登場するという側面も大きかったと思います。自分としては、様々な反応が来ることもある程度覚悟して臨んだプロジェクトでした。
ただその不安を払拭するくらい、見てる人全員がすごいと思える音楽、映像にしようと思ってましたね。
以前、星街すいせいさんがTwitterスペースでもお話していたんですが、歌い出しの前に少しセリフを入れたいというアイディアもあったんです。ですがそのまま歌い出して欲しいとリクエストしました。それは、自分が星街すいせいさんの歌の力を信じていましたし、歌と映像の力で全員を納得させてやる、という気持ちが強かったからです。
──Mさんとしては、コンテンツの部分に注目して欲しかったんですね。
Mさん:その通りです。VTuberタレントが初登場します、となると、技術発表会のような案件になりがちじゃないですか。コンテンツが置いていかれちゃったり。出演していること自体がすごいのではなくて、そこで体験できる音楽や映像に注目して欲しかったんです。
公開後の反応などを見ていても、どのように実現しているのかではなく、みなさんが当たり前に受け入れてくれて、かつ音楽や映像を楽しんでくれている。それを見た時は本当に嬉しかったです。
──確かにYさんが担当した技術的な部分って、いかに自然にするかが大事ですよね。
Yさん:そうですね。やっぱりピントを合わせて欲しいのは星街すいせいさんの歌なんですよね。なのでとにかく自然に。絶対に技術自慢のような映像にはしないぞ、と思いながら開発していましたね。高い技術を駆使しながら、どれだけ当たり前の映像にするか。そこが肝だったように思います。チーム全員、星街すいせいさんの歌の力を信じていたというところも大きいですね。
──星街すいせいさんに注目してもらうために、チーム一丸となって実現したプロジェクトだったんですね。
Yさん:本当にその通りだと思います。
VTuberタレントだから、これくらいのクオリティだよね、と言われるのも嫌でした。
実力があって認められたアーティストとして出演ができたと信じていますし、だからこそチーム一丸となって妥協のないクオリティが出せたと思います。
「THE FIRST TAKE」の格を下げたくない、という想いもありました。リスペクトがあるからこそ、こちらも頑張るしかない、という気持ちでいっぱいでしたね。
なので、会社の「プロダクト」というよりは、「アート」に近くなったなと感じています。量産できるのがプロダクトだと思うんですが、この案件は量産してくれと言われても、悩んでしまうくらい凄いことをやっています。カバーはプロダクトだけじゃなく、アートも出来るようになったというのは、会社としても強みになるんじゃないかなぁと思っています。
■公開後の反響
──いざ公開した時の気持ちっていかがでした?
Mさん:まず、公開が本当に怖かったです(笑)。
──そうなんですね。それはどういう理由ですか?
Mさん:収録現場も初めて体感する空間で、人生で一番の緊張を味わったなと思ったところだったんですが、完成の連絡をいただいた際、本当にこれでよかったのか、本当にいいものを作れたのか、という気持ちになったからですね。
公開前にTwitterなどでリツイート数が出ていたので、多くの人が注目しているっていうのは分かっていましたし、比例してYouTubeの待機人数が多くなっていくのも見ていました。
VTuberタレントのスタンダードとして、本当にこの動画が受け入れてもらえるのか。
良いものを作ったという自負もありながら、批判の嵐にならないかなどかなり心配していましたね。
Yさん:自分は世に出したものが全てだと、ある程度覚悟を決めながらただただ祈ってましたね。動画が公開されてから、ようやく世に出たのだなと初めて実感が沸きました。
公開された際の反応を見て、ようやく安堵したのを覚えてます!
──公開時、同時接続数もかなり多かったですよね。
Mさん:結果的には約16万人という記録的な同時接続者数でした!
──公開前と、公開後で何か仕事上の変化などはありましたか?
Mさん:自分は楽曲制作チームの人間なので、外部のタレントさんやアーティストさんとお話しする機会が多いのですが、VTuberという存在の認知はめちゃめちゃ上がったなと感じます。
それまでは、VTuber業界や文化自体を知らない方も少なくなかったですが、「THE FIRST TAKE」出演以降は、動画を見ている方がいらっしゃたり、星街すいせいさんの名前を出してくださる方が増えたかなと思います。併せて素晴らしかったですとコメントを頂ける機会も増えました。
──ちなみに、社内で全く情報を出さないようにしていましたよね。社内での反応の変化はありましたか?
Yさん:もちろん社内でも当日まで極秘にしていたので、告知を見て知った人が大多数なんじゃないかなと思います。公開後はAWARDの受賞もそうですが、みなさんによかったよ!と声をかけてもらえましたね。
──今後やっていきたいことなどありますか?
Mさん:今回星街すいせいさんが出演させていただいた「THE FIRST TAKE」に携わらせていただいて、ありがたい思いでいっぱいですが、今後も様々なものに挑戦していければなと思っています。もちろん星街すいせいさんもそうですが、音楽を通じて、カバーやホロライブプロダクションをもっともっと広めていきたいです!
──Yさんはいかがでしょうか?
Yさん:自分だけではなくチームの想いとして、実写との合成が当たり前になったらいいかなと思っています。背景を実写にしてみたり、あるいは実写の人間と共演したりなど、周辺のプログラミングをより高度にすることで、いろんな案件に対応できる様になったらいいなと思っていますね。
──お二人ともありがとうございました!
■楽曲管理担当
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